2004年4月10日(土)

育ちゆく子に贈る詩(不二陽子・人文書院)

育ちゆく子に贈る詩(うた)―シュタイナー教育実践ノート

現在、東京シュタイナー・シューレの上級学年講師を務める著者が、東京・町田(かな?)で主催していた小学生を対象としたヴァルドルフ教育のフォーラムでの活動記録をつづったもの。活動の中に誕生日に著者が子どもたちに詩を贈るというものがあり(実際のヴァルドルフ学校では1年の締めくくりに先生が生徒に通信簿とともに詩を贈るらしい)、それぞれの子に贈った6年分の一連の詩を取り上げながら、著者の思いと子どもたちの成長の軌跡が記されている。

今まで読んだ本は、ほとんどが海外(主にドイツ)での事例を取り上げたものだったり、ヴァルドルフ教育“を”学ぶことが主だったりしたが、この本は実際に日本でヴァルドルフ教育“で”学んだ実践の記録であり、ずっと具体的で身近に感じることができた。でもそれよりもなによりも、「あ、教育ってこういうものなのか」ということにはじめて気づかされた、とても印象深い本だった。

教育が何か知識や経験を教えることだったら、その道(国語、算数、理科、社会、などなど)のプロフェッショナルであればできるような気がする。でも、その子の話を聞いたり、友だちや親とのやりとりを観察する中で、本人もまだ気づかないその子の心の姿を知りそれに少しでも応える取り組みは、相応の訓練を詰み、さらに経験を詰んだひとでないとできないだろう。誕生日にその子の心に響くたったひとつの詩を贈る、という行為の中に、学問ではなく教育の本質が見えるように思った。親に出来ることもたくさんあるだろうけど、これだけはなぁ... 親・親戚以外の第3者の大人から言葉を贈られるというのはいい体験になりうると思うし、自分の子どももそういう大人と出会って欲しいと思います。