読書日記(ポビーとディンガン)
by 鈴木 宏枝
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ポビーとディンガン(ぽびーとでぃんがん)
原題Pobby and Dingan読んだ日2001.4.24
著者Ben Rice(ベン・ライス)訳者雨海弘美画家(N/A)
出版社アーティストハウス出版年月日2000.12.20原作出版年2000
感想 全然違うのだけど、『肩胛骨は翼のなごり』を思い出してしまった。オックスフォードの大学院生が書いた(なんと、同い年だ)オーストラリアを舞台にした作品である。肩肘張らずに、さらりとアボリジニの事が出ていることや(からかっている感じもあったけど、それは、先住民のことも含めた教育を受けているアシュモル少年がありのままを見たときの感じ方なのだろう)、まるで1世紀前のゴールドラッシュのようなのに、まさに現代の話であるところに、トリップ感覚を覚えてしまうオパール掘り。テーマとは違う部分も、おもしろかった。
 ポビーとディンガンというのは、アシュモルの妹ケリーアンの空想の友だち。空想の友だちだけど、ケリーアンにとっては実在している。ある日、ポビーとディンガンが行方不明になってしまったことで、ケリーアンはどんどん具合が悪くなっていき、しかも、オパール掘りの父さんには、穴荒らしの濡れ衣が着せられてしまう。アシュモルは、我ながらバカバカしいと思いながらも立ち上がり、チャリをかっとばして……。
 アシュモルが、すごく生き生きしてていいなぁ。また、「家族」「リアリティ」という意味でも、考えの幅が広がる。すごく地に足が着いているのに、全部が夢のようにも思える。ラストが切ない。そして、最後の5行は、絶対に必要ない。


鈴木 宏枝
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