読書日記(ダブル・ハート)
by 鈴木 宏枝
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ダブル・ハート(だぶる・はーと)
原題(N/A)読んだ日2001.4.19
著者令丈ヒロ子(れいじょうひろこ)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社講談社出版年月日2001.2.13原作出版年(N/A)
感想 意外にもけっこうおもしろく読めてしまったのだけど、どこか判然としない気持ちも大いに残る。主人公の由宇は父親と二人暮し。お嬢様学校に入学して、よき父娘関係・よき友人関係に普通に生きている。が、父親に、「出産のときに亡くなったふたごの妹由芽がいる」ことを聞かされてから、自分の幸せ、自分のアイデンティティが信じられなくなる。由宇は、一人で池袋に出かけたとき、通り魔に襲われ、病院に運ばれたところで、自分とは正反対の格好や態度の(古い言い方で言うとコギャルっぽい感じ)の女の子ゆめが病室に現れた。由宇は、「you=I」と言うゆめにすごくとまどいつつ、だんだん彼女とのかかわりの中で、自然に幸福感を感じることをおぼえていく。
 ゆめは、由宇のもう一つの人格(いい子でいる裏のシャドウ)。だけど、由宇を通り魔から救ってその後恋人になったミオ君にも、ゆめの姿ははっきりと見えるし、父親は「ゆめが見える」と言ったとたん、ものすごく不機嫌になって、よき父娘関係なんてどっかにいってしまう。その実在感が、読んでいるときの居心地の悪さなのかなぁ。由宇にしか見えないというのなら、まだ納得がいくのだけど。そのわりに、最後に由宇とゆめがキスをして統合?されるところだけ、妙に現実感がなくて、スタンスが今ひとつはっきりしていないと思った。ミオ君との幼い恋愛感情など、もしや、性の目覚めのクライシス?
 由宇とゆめの分裂具合と重なり具合が、心因性なのか、ほんとにもう一人いるのか、なんだか定かではない。その中で、奇妙にリアルなのは、いい子の自分が幸せすぎてこわい、という由宇の気持ちだけ。ギャグっぽいやりとりや、屈託のない親友同士のような由宇とゆめのトークなどは悪くなかった。
 ミオは、なんだか、お嬢様学校のかわいい子から、由宇にお近づきになりたかっただけという感じで、なんだか恋人として頼りない。ミオと由宇は、今は燃えているけど、あまり長続きしないんじゃないかな。あと、これはもう私自身の問題なのだけど、中高の生活や感情を分析的にできるのは、ほんとに、この年になってから。令丈さんの視点を由宇にくっつけられると、やっぱり落ち着かない。


鈴木 宏枝
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