読書日記(えんの松原)
by 鈴木 宏枝
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えんの松原(えんのまつばら)
原題(N/A)読んだ日2001.9.21
著者伊藤遊(いとうゆう)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社福音館書店出版年月日2001.5.1原作出版年(N/A)
感想 『鬼の橋』よりおもしろく、テンポよく読めた。憲平と音羽のよい関係、アニマ・アニムスなど心理学的な批評を思い出させる呪いと統合のイメージなど、パターンをうまく使って、少年の生きる力をめざめさせた話、という感じ。
 えんの松原や黒い鳥は、すごくリアルに感じられた。光のそばにある大きな影、というのもまた、例えば河合さんが好みそうなイメージである。時節柄か、怨霊のありようや、恨みの蓄積、攻撃などが、今のテロリストに重なって見えてしょうがなかった。
 『鬼の橋』を読んだ頃、神宮先生や角野栄子さんが、「文体がだめだ」とおっしゃっていた。翻訳児童文学のような文体に、時代背景や神話の世界が合わないということかな、と思ったのだけど、『鬼の橋』については、実は私はそれほど違和感を感じなかった。だけど、『えんの松原』の方は、東宮と下っ端の男童とのやりとりや、唐突に出てくる「前世からの縁で(浅からぬ〜という古語だよね)」などの言い回しが、なんだかしっくりこなかった。憲平も音羽も夏姫も、まこと、現代の子どもになってしまっているんだな。ただ、現代の子どもが、かように一皮むける話だと考えると、それはそれで心地よい読後感がある。


鈴木 宏枝
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