読書日記(ぼくたちが大人になれない、12の理由)
by 鈴木 宏枝
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ぼくたちが大人になれない、12の理由(ぼくたちがおとなになれない、じゅうにのりゆう)
原題New Year's Day読んだ日2001.9.14
著者Ralph Brown(ラルフ・ブラウン)訳者金原瑞人画家(N/A)
出版社アーティストハウス 発売:角川書店出版年月日2001.4.27原作出版年2000
感想 映画のノヴェライゼーションだけど、小説は小説としておもしろく読めた。スキー教室で雪崩に遭って、仲間9人と先生1人を喪ったジェイクとスティーブン。「生命の書」にリストアップした12のことをやり遂げたあと、1年後の1月1日に一緒に死のうということになる。
 リストアップされたのは「銀行強盗をする」「学校に火をつける」「手術をする」などなど。知恵を働かせたり、やけくそになったりしながら、二人はリストをこなし「済」マークを押していく。だけど、これらが、スティーブンが撮っていたビデオの中での、10人それぞれのひとことであることをジェイクは知らず(知らなかったことに、最後に激昂し)、また、家庭環境の違いもあり、カウンセラーを交えた中で、二人の少年の関係も変化して、心がバチバチとぶつかりあったり離れたりする。
 そうは言っても、次の年の1月1日に何が起きるのか、結末が読めず、最後まで引き込まれた。トリップしているときの詩の文体と、最後の詩の文体。生きろ、と思わず思いながら、崖の上の「12」の重さに天秤がぶれるような気持ちになる。スティーブンが愛していたヘザーの「願い」にそれ以外の11の願いは吹き飛ぶような。
 でも、惨事の生き残りになった子ども(大人でも)の心は、まわりが期待するように、簡単に分かりやすく癒されるものではない。まわりからの圧力(子を支配したい親という図式もある)に加えて、自分でも自分の心はよく分かっていないのだから。
 映画の方も、どんな出来なのか、見てみたくなった。


鈴木 宏枝
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