風使い通信・屋久島紀行/はじめてのときめき☆はじめての屋久島
1992年8月10日(日)
天気:晴れ
行程:屋久島(終日)

 この日も同じく5時半に起床。台風一過。天気は快晴。絶好の登山日和である。前日と同じように安房から安房林道を入り、途中で屋久杉ランド方面に分かれる道を入っていく。屋久杉ランドと言っても、別に遊園地があるわけではなく、屋久杉の遊歩道のついた自然保養林のことである。

 1時間ほどで登山口の起点に到着。装備をチェックし、足元を固めていざ出発!と思いきや、いきなり台風でなぎ倒されたと思われる巨大な杉が道を塞いでいた。杉の枝をかき分け幹の乗り越えて先に進む。昨日とはうってかわり、なんともこの先を暗示する幕開けである。淀川小屋までに3箇所ほど倒木によって道が塞がれているところがあった。やはり台風の残した爪痕は大きい。

写真31・倒木によって道は寸断されていた
写真32・これでも道...

 淀川小屋で水の補給、小休止をし、先へ。宮之浦岳に登るときは、通常この淀川小屋を起点とする方が余裕があってよい。相変わらず道は木登り根登りの状況である。小高い山を2つほど越えると小花之江河、さらに1つ越えると花之江河に着く。花之江河は密生した森の中のオアシスといったところである。湿原にイグサが生えていてちょっとした庭園といってもいいくらいの見事な景観である。花の咲く季節だともっと彩りが添えられてきれいなのだろう。

写真33・花之江河
写真34・どことなく庭園の気分
写真35・さらに山奥へと分け入る

 それにしても見事な天気である。一日中、この辺りでうたた寝していたらさぞかし気持ちいいだろう。思わずそんな誘惑に負けそうになる。気を立て直して前進するも、ここからの道が曲者なのだった。なにせお世辞にも道とは言えないような道が延々続くのである。台風通過直後ということもあったが、山登りというよりは基本的に岩登り沢登りなのであった。「あ、行き止まりだ」と思ったら、その行き止まりとおぼしき岩の上からまた道が続いているという状態である。案内版が無ければ確実に道に迷うようなところもあるので、注意されたい。

写真36・これでもやっぱり道...
写真37・投石岩屋付近

 そんな道を登り切ると投石(なげし)岩屋に辿りつく。ここはちょうど投石岳の中腹にあたるところで、若干のキャンプスペースがある。そして大きな岩がごろごろごろごろ・・投石と命名されたのがよくわかる。ちょうどここから登ってきた反対方向の谷を越えると正面に黒味岳がそびえている。ここの頂上にも大きな岩がのっかっている。そういえばここ屋久島の山々の山頂や山腹にはでっかい岩がのっかっているものが多い。一瞬「謎の巨石文明か?」と思うような奇景が広がっている。またこの投石岩屋付近については帰りに詳しく話すとして先へ急ぐ。

 ここからいよいよ屋久島への峰々のアタックである。投石岳を左に迂回して、安房岳、翁岳を右に見ながら、栗生岳を経て宮之浦岳へ至る。高低の繰り返しはあるものの、一旦峰にとっかかれば割と楽なコースである。道もさすがにこの高度(1700m以上)になるとさすがに低木や下草だけになり歩き易い。しかしこの高度になっても豊富に湧き出る水には驚いた。もう見えるところが峰の頂上というのに、まだ水場があちこちにあり、湿地のようなところも存在するのである。さすがに雨の島である。それだけ保水能力があるということなのだろう。

写真38・投石岳を望む
写真39・霧のかかる宮之浦岳付近

 などと言っていたところ...道の途中に沢にずぼっとはまる。台風で地盤がゆるんでいたのだろうか、踏み込んだところがずるずると崩れて落ちてしまい、1mほど下の沢に落とし穴にでも入るようにすっぽり落ちてしまった。幸い後ろ向きになって落ちたので、たいした怪我はなかったが。
 やがて宮之浦岳付近が見え始める。が、なんと霧が出ているではないか。誰のせいだと問うのは敢えて避けておこう(笑)。「宮之浦岳までの最後の水場です」の看板がある。もうゴールは近い。

写真40・宮之浦岳登頂

 11時45分、ようやく宮之浦岳登頂。1935m、九州最高峰である。心配していた霧もたいしたことはなく、辺りの峰々を見渡すことができた。写真撮影は後回しにしてとりあえず昼食とする。山頂で食べる握り飯もやはりうまい。弁当はおにぎりが最高である。そして持ってきたソーセージやら缶詰の牛肉大和煮を平らげる。そして水場から持ってきた水、雄大な風景を前にする食事は感慨深い。
 そして休憩後に撮影会。登ってしまえば後は下るだけ、そんな気持ちがわれわれの緊張の糸を完全に切った(笑)。

写真41・山頂点景
写真42・台風一過の夏の青空
写真43・撮影会……

 1時間ほどのんびりと滞在して、13時前に下山開始。帰りはただひたすらのんびりのんびりの下山である。下山途中にいくつかのパーティと行き違う。だいたい他のパーティーは縦走コースを取るので、宮之浦岳日帰りなんてほとんど気違いに等しい行為なのだ。しかしそんなことは気にするはずもなかった...。

 途中の何度かの休憩をはさみながら、投石岩屋に到着。この時点で緊張の緩みは最大限に達する。ついにここの大岩の上で昼寝を敢行。なにせそれぐらい気持ちいいところだった。温かい陽射し。青い空。鳥のさえずり以外はなんの音もない。そして眼前にそびえる雄大な黒味岳。これで昼寝をするなという方がむちゃである。

写真44・昼寝……

 そのうち隣で休んでいた人が黒味岳山頂に登っている人に手を降っている。米粒ほどに見えるのが人だったのだ。そのうち大きい声で会話を始めた。

「海は見えるかーっ」「見えるよーっ」

 直線距離にして500m以上、高低差も300〜400mはあろうかという人と話ができる。なんという醍醐味!僕はすっかりこの場所が気に入ってしまった。今度来る時はこの辺りにテントでも張って一日中うだ〜っとしてみたいものだ。それぐらいいいところであった。

 さてそんなところで昼寝をしていたもんだから、ペースは大幅ダウン。急いで花之江河まで戻る。途中、男女4人組のグループと出会う。そう、さっき黒味岳で会話を交わしていたのはまさにごのグループだったのだ。そうしてあと男性2名ほども加わって、わいわいと追い抜き追い抜かれしながら、日暮れ間近の18時頃にようやく登山入り口まで戻ってきた。往路4時間15分、復路4時間30分。これにより如何に復路が堕落していたかがよくわかるというものである。

写真44・淀川小屋のせせらぎ

 この日も当然町営の温泉に入りに行く。疲れもあってほんとお酒が気持ちよく身体にまわってよく眠れ...zzz・・・

写真45・宿に居た子猿


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