コミックマーケット49を終えて。


いやはや。とにもかくにもなんとか無事コミックマーケット49を乗り切り、卒論もなんとかなった。各方面で協力して頂いた皆さんへの感謝の気持ちは尽きない。

今回のコミケほど過酷な製作条件だったものはなかった(と言っていいだろう。結果的には)。まぁそもそも卒業を控えた理系の学生が、年末のコミケに出るだけならまだしも、新刊を企画・編集・製本までやっちゃおうというのだから、それなりに無茶な話だ。まぁ最初から無茶は承知の上だったから、とりあえずはやれるところまでやろうと突っ走った。お陰で本は完成して、見事に完売。総頁数も68頁とこれまでの中で一番多いものになった。

新たな展開もあった。個人的に参加していたジブリMLを通じて、新たに2人の方に原稿をお願いして本づくりに参加してもらった。vol.8をWWW上に載せたことで、どんな雰囲気で本をつくっているのかも簡単にわかってもらえたし、mailを通じて原稿に関してきめ細かなやりとりができた。これもひとえにインターネットの効用かと言えば出来すぎだが、インターネット方面への展開を手探りで始めたにしては、十分に満足のいく結果だった。

しかし、どことなく間に合わせ、やっつけ仕事の感は否めない。完成度という点においては夏の「風使い通信vol.8」の方が上だったような気がする。それは単にみてくれの完成度というだけでなく、気持ちの充実度も含めてのことだ。

冬コミカタログの新田真子の「コミックマーケットスクランブル」にも、間に合わせ、その場しのぎ的な本が増えているという批判が載っていたが、全くもってその通りというよりほかない。別に最初からそのつもりでつくっているわけではないのだが、どうしても締切間際になってあわてて作るということになる。うちの本作りの形態から言って、印刷所の入稿締切というのも事実上存在しないから、さらに切羽詰まった製作スケジュールにならざるを得ない。また僕はいいとしても、本作りに参加しているほとんどが社会人だから時間の都合というものもあるのだ。

だからといって「余裕がないのだ」という弁解の理由になるとも思ってないし、弁解するつもりもない。だいたい前回の「風使い通信vol.8」などは、夏コミの1ヶ月前に企画を思い立ち、それから原稿を集め、それで十分に納得の行くものができたわけだから、それほど時間というものは関係ないだろう。

やはり決定的な違いは「創作意欲を書き立てられる何か」があるかどうか、ということだろう。夏は折しも「耳をすませば」「On Your Mark」の公開の時期であり、両方とも本を作るに足りるインパクトのある作品だった。なにをかいわんや、いやなにかを言いたい、その気持ちだけで、ほんとにその本は生き生きとしてくるものだろう。

今回の「風使い通信vol.8++」もその気持ちが無かったわけではない。実際に聖蹟桜ヶ丘の日の出ツアーで得た感動は大きかったし、ナウシカについても、もう少しきちんとしておきたかった。

しかし実際問題として、卒論に振り回される形となり、「なんとか形にしなきゃ」「落とすわけにはいかない」という気持ちが勝ってしまったため、結果的に自分の中にわだかまりが残るものになってしまったのだろう。その点は、ほんとに申し訳なく思っており、お許し頂きたいものである。

それでも今回もたくさんの人に手に取ってもらい、買ってもらう喜びは何物にも代え難い。「まさに人生このときのためにいきてるのよね〜。」(ミサト談)とまではいかないにしても、本を作る支えになっていることは間違いない。これだけはWWWにはない楽しさである。楽しみに待ってる人がいる。また夏に向けての新たな日々が始まる。

でだ。いよいよ次の話。

構想としては以下のような感じだす。 まだ構想段階だけど、もうそんなにたくさんの本を作れるわけではないので、区切りになるような本になればいいなと。ナウシカのこともね。ま、自分のためにつくるようなものでもあるわけです。

こんなやつですが、もしまだお付き合いいただけるのでしたら、どうぞ手伝ってやってください。これからもよろしくお願いします。

1996年2月16日 病棟のロビーにて雨に煙るランドマークタワーを眺めながら
風使い工房出版事業部・風使い通信編集長 じょばんに


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